水槽の中の脳 - 精神と外部世界

Daisukeh 2009/03/02 16:51 作成
Daisukeh 2009/05/07 17:57 追稿
Daisukeh 2009/05/07 21:45 校正
Daisukeh 2009/08/09 12:48 移設

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大脳新皮質  W・パウンドストーンの「 パラドックス大全 」を読んでから、今まで知らなかった論理学哲学の世界があることを知った。知能のある生物(主に人を指すこととする)なら当たり前のことだが、 知っていることは知っている し、 知らないことは知らない 。一見おかしな日本語のようで、それでいて至極当然のことのように聞こえるこれらの文節は、 知らないことを知っているか? と問われたときにその論点に気付くことができる。人は 知らないことを知ろうとすることはできない から、したがって 知らないことを知らない 、ということになる。「知る」ということを「知識」とするならば、 知らないことを知っている という定義は、その見地こそが知識の探求であるといえるのではないか?あるいは、 知っていることを知らない 、という場合は嘘をついているか、あるいは呆けているということになる。それはともかく、自分の記憶にない事象について、それが本来的に存在する事象であるということに気付くことが、 知らないことを知っている ことであって、大多数の人々は(自分も含めて、残念なことに)そのことに気付かない。 知らない世界は知らないままなのである。

MEMEX - Memory Extender  なにやら言葉の綾に引きずり込むようではあるが、知識とはそういうものなのかと思う。現代哲学では知識を3つの項目の真偽値のマトリックスで定義している。(1)その事象が真実だと信じられていること。(2)その事象が真実であることが証明できること。(3)その事象が実際に真実であること。 の3つである。安易に知識を論じようとした場合、これら3つの項目が全て 真(=True、正しい) であることが望ましいし、当然であると考えがちであるが、得てして現実はそうではないらしい。例えば新しい事象であったり、同じ事象でも文化・風習・信仰などの差異により、どれかひとつ、あるいは複数が 偽(=False、間違っている) でありながら、信じられていることが多い。この場合の「信じられている」とは、真実が正しく理解されずに信じられていないことや、誤った真実(=偽実)があたかも衆知の定説として信じられているということだ。地動説(太陽中心説)は前者の例だし、ネス湖の恐竜は後者の例になる。ちょっと「 パラドックス大全 」の要約みたいになってきたから、このあたりで知識についての僕なりの見解は切り上げておこう。

サヴァン症候群  然るに、 知識はどこに蓄積され、そしてどこで推論されるのだろう? もちろんそれは脳であり神経線維、すなわちシナプスとそれのネットワーク網で構築された神経伝達物質の電気的相互作用であるのだが、実際にはそれがいかなるものなのか、まだ現代の人類のテクノロジではほとんどと言っていいほど解析できていない。ある部位について、電気刺激に対応する記憶や感情が再現することや、先天的あるいは事故が原因で脳の一部を欠損した人、あるいは遺伝子異常を持つ人を観察することで、ある程度推定することができている。がしかし、自閉症認知症など、脳組織や神経伝達系の不具合の仮説的同定と治療に留まっていて、神経組織やその組織網が何を意味しているかまでの研究は、なかなか前進していないようにも思う。倫理的に問題があることは否めないが、例えばサヴァン症候群自閉症の特異な症例)にみられる超人的な記憶や計算、芸術などの才能を見たとき、脳には何か秘められた構造、潜在的な能力があるように思えてならない。異常だからこそサヴァン症候群の症例が見られるのか(例えば、エンジンを改造した自動車を乗り回すようなものか?)、あるいはすべての人の脳にはそのような機能が備わっていて、正常なのはその潜在的な能力を凍結させて働かないようにしているのか…。ひとつ考えられるのは、選択的淘汰説(ダーウィンの進化論的なもの)である。精神や身体に他者よりも不利な条件を持っていると、生物としてしてみた場合に、その個体は淘汰(=死)されて、子孫を残すことができないということだ。超人的な才能を持っていても、サヴァン症候群の彼らは自閉症であることには変わりない。現代社会はそういった弱者(別の見方からすれば我々が弱者か?)を救済するシステムを構築してきたが、さりとて子孫の存続という点では、現実問題としてあまり期待が持てない。(これらの考え方は、彼らを差別しているわけではないことをご了承ください。)

水槽の中の脳  このトピックの表題「水槽の中の脳 - 精神と外部世界」について語ろう。ここまで述べてきた「知識」とその「真理」とは、それらを知る我々人間の脳の存在が成し得る世界観そのものなのではないかと思うのだ。W・パウンドストーンは「 パラドックス大全 」で「水槽の中の脳」の記述を、最初の章「逆説」のメインテーマに持ってきていた。このことはおそらく、以降の章で紹介されるさまざまなパラドックスの根幹を成す部分において、 自分自身の存在をまず疑うべし という警告とともに、パラドックスという新世界への招待のように思えたからである。「水槽の中の脳」を簡単に説明しておこう。人間の感覚はそのほとんどすべてが神経組織を通じて脳に接続されている。脳は神経組織から入力される電気信号によって、判断や記憶などの処理を行い、必要があれば再び出力となる神経組織に電気信号を与えて手や口を動かす。したがって、脳と脳以外の組織は神経組織で接続されていると言い換えることができる。映画「MATRIX」の世界のように、超科学の存在する未来(あるいは高度な文明を持つ別の惑星?)に自分が存在するとして、そこにいる科学者が自分が眠っている間に自分の脳をそっくり取り出し、神経組織の入力と出力の部分に、脳以外の組織を完全に模倣する機械を接続したとしよう。この時点で、自分の脳は水槽(おそらく培養液のような液体で満たされている容器)の中にあるということだ。目覚めたときに自分がそのことに気が付かないとすれば、はたして自分は何処にいて何をしているのか、あるいは自分自身の存在とは何か、判断することができるのだろうか?実際問題として、超科学や別の惑星でなくても、このパラドックスを論じることができる。なぜなら今この文章を読んで考えて、パソコンを操作していることが、すなわち脳と脳以外の組織の電気信号の交換であり、実際に脳は頭蓋骨といくつかの膜組織と脳脊髄液の中に浮いているのである。神経組織は脊髄に束ねられて脳幹から小脳や大脳に接続されている。(この部分を超科学の機械に接続すればうまくいく!)これを「水槽の中の脳」と言わずして何と言おうぞ!

東京の風景 - サヴァン症候群の患者  僕はこの問題について、水槽の中か頭蓋骨の中かはあまり問題じゃないのではないかと思うのだ。なぜなら、先天的あるいは後天的に体に麻痺がある人であっても、脳が生きていれば、その人は生きていることになる。これは臓器移植での脳死判定をみれば明らかである。あるいは逆に、筋萎縮性側索硬化症(ALS)などで段階的に麻痺していく病気では、脳以外の組織が徐々に動かなくなったり、失明などで感覚を失っていくわけだが、昨今では彼らの尊厳死についての論議が活発になっていると聞く。手や足が動かなくなって、瞼や頬の微かな動きでパソコンを操作して自分の意思を伝える姿は、痛々しくもあるが、ある意味では「生」への尊厳がこれほどまでに重いものかと考えさせられもするのだ。テクノロジを持ち出せるのであれば、例えば人工脳なども考えることはできるが、まだそこまで文明が到達できていないし、実現可能な技術かどうかもわからない。人間の精神は何処に宿るのだろう?思考や記憶の個性を精神と呼ぶのであれば、すなわち脳こそが精神の詰まった有機物なのだろう。人工脳が作れるテクノロジがあれば、人工の脳以外の器官を作ることもできるかもしれない。そうすれば例えばALSで苦しむ人や、先天的に麻痺を持つ人が自由に行動できることにもなるだろう。人工脳が自分の脳と直列接続できれば、サヴァン症候群の患者のように超人的な才能を誰もが持つことができるかもしれない。並列接続できれば、自分の感覚や体験を保存することができるかもしれない。ただ、そうなったとき、自分自身は(精神は)どこに存在しうるのか、よくわからなくなってくる。

 だからこそ、精神と外部世界は互いにまったく別の事象でありながら、互いの存在を肯定するものなのかもしれない。脳が感受する外部世界は自分自身の感覚であって、当然自分の記憶と判断による精神世界となる。時空間的にも他者が自分と100%同じ感覚を得ることはできないし、そもそも他者の脳が感受する外部世界は異なっている。であるならば、きわめて類似した外部世界を感受する自分と他者であっても、同じ世界に存在すると言えるのだろうか?別の言い方をするならば、自分と他者を区別するのは外部世界を通してであるとも言える。ここで言及している精神世界は自分の心が作り出す世界のことであり、それは自分の過去の記憶や思考に基づく感受情報を、脳内で再構築した結果である。そういう意味では、脳の中に時空は存在しないのだ。それは見事なまでの完全な錯覚であって、脳と神経組織の入出力をリアルタイムに行っている結果、そこにあたかも存在すると思ったり、過去の記憶から映像や音声、雰囲気を回想するといった、記憶と判断のフィードバックを行っているだけなのだと思うのだ。一方で脳は忘れることを得意としているともいえる。脳神経網は物理的に存在するのであるから、記憶や判断に費やす脳神経の数は有限のはずである。したがって、あまり使用しない記憶や判断は徐々に忘れてしまう。というより、新しい記憶や判断の上書きがされるか、あるいはその領域がデッドゾーンとなるかである。だからこそ、人間は強化学習に慣れている。勉強とはそういうことなのだと思う。

 相変わらずとりとめもない乱文になってしまった。この考えは「 パラドックス大全 」や攻殻機動隊を読んだり見たりしてもらえればわかると思うのだが、なかなか自分の頭の中にある考えを伝えるということは難しいものである。これがプログラミングや電子工作などのテクニカル・ノートならまだ言いっ放しでも何とかなる(?)と思うのだが、心情や思想となるとそうはいかない。SFチックな話でまとめるのは嫌なのだが、「精神のありか」と外部世界をつなぐもの、その手段について、何かいい方法がないか模索しているし、模索したいのである。もちろん最先端の脳科学には及ばないが、何かもっとプリミティブな部分で人間を構成するパーツやエレメントがあるのじゃないかと思うのだ。見落としている何か、精神に感応する何か、外部世界と精神の間に存在する何か、である。攻殻機動隊ではそれを「 ゴースト 」と呼んでいたんだと勝手に解釈しているが、それはアニメーションでもフィクションでもなく、本当に存在するのだと信じたい。

 最後に、上の写真のような精密な風景画を描くサヴァン症候群の画家 Stephen Wiltshire - The Human Camera の動画を見ていただきたい。人間の可能性が如何に計り知れないか思い知らされるだろう。

Daisukeh 2009/05/08 08:44 追記

 さらにふたつ、こちらはおそらくNHKで放映されたドキュメンタリー(ソースはBBCあるいはディスカバリー・チャンネル)がある。長編だが一見の価値派あると思う。

【脅威の記憶力】 サヴァン症候群 ~自閉症の天才達~

【脅威の能力】 サヴァン症候群と脳の不思議 ドキュメンタリー」

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掲示板

, 2009/05/08 21:12
自己レス。「【脅威の記憶力】サヴァン症候群 ~自閉症の天才達~(以下、自閉症の天才達)」と「【脅威の能力】サヴァン症候群と脳の不思議 ドキュメンタリー(以下、サヴァン症候群と脳の不思議)」は非常に興味深い内容のビデオだ。「自閉症の天才達」では絵画や音楽に特異な才能を持つサヴァン症候群の若者が出てくる。そしてその行動パターンの考察と、偶然に発見された痴呆症(認知症)患者の極稀でしかも短い期間に発現したサヴァン様症状によって、脳の側頭葉の左前部に何らかのカギが秘められていることがわかってくる。この部位は分析と言語と概念に関係していて、そこが損傷することにより芸術や記憶に超人的な能力を発揮するのではないか、という推測がたってくる。「サヴァン症候群と脳の不思議」では、さらに一歩進んでサヴァン症候群にコンタクトしようと試みている点が、非常に興味深いところだ。それまでサヴァン症候群は自閉症に見られる反復動作からくる訓練によって、特異な才能が開花すると考えられてきた定説を覆し、最先端のテクノロジを駆使して彼らの脳の活動を研究していく。そして「自閉症の天才達」で言及された脳の左側頭葉へとたどり着くのだ。健常者である被験者に対して、人為的にこの部位に電磁波を照射することで側頭葉の活動を停止させる。実験はその前後で同じテストを行うのである。言うなれば、人為的に特異な才能を開花させるという、サイボーグ手術的な研究が、今まさに行われているということなのだ。
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telepathy/水槽の中の脳.txt · 最終更新: 2009/08/09 12:50 by daisukeh
 

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